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  英国:パテントボックス(知財関連減税)制度が施行  
         
  (1) 英国のパテントボックス制度  
     英国の税制改正により、法人税法2010の新パート8として成立し、今年(2013年)4月1日から、いわゆる  
    パテントボックス(patent box)制度が施行された。  
         
     これにより、2013年4月1日以降に、英国企業、または、英国における工場などの施設(permanent establishment)  
    に生ずる所得の内、特許などの知的財産に関連した所得に対しては、全世界における利益に対して、  
    10%の法人税率が適用される。英国の通常の法人税率は、22%である。  
         
     英国の本制度は、適用対象が広く、英国、欧州で登録された特許権に限らず、その特許権に密接に関連した  
    ノウハウ、営業秘密、著作権なども適用対象となる。ただし、商標権や意匠権のみでは、適用対象とならない。  
         
     また、本制度を適用されるためには、必ずしも、企業は当該権利を所有する必要はなく、専用実施権の  
    所有でもよく、研究開発が、英国内、あるいは、英国企業で行われる必要もない。従って、我が国企業が日本で  
    開発し、特許権等を取得したものでも、他の条件、例えば、制度適用のための開発要件や管理要件などの  
    条件をクリアしていれば、適用される。  
         
  (2) パテントボックス制度とは  
     パテントボックス(特許減税)制度とは、法人の課税所得のうち、特許等の知的財産による所得部分に対して、  
    通常税率より低い法人所得税率を適用、あるいは、所得を控除する制度である。
       
       パテントボックス制度は、企業にとっては、税金を削減できるメリットがあり、国にとっては、減税制度によって、
      企業における開発・イノベーション意欲を促進し、当該国内の研究開発拠点の流出を防止し、海外から
      研究開発型の企業を誘致し、延いては、国内経済の活性化を図ろうとするものである。
         
       イノベーション意欲の促進を目的とした減税処置としては、研究開発費の税額控除などがあるが、これは、
      イノベーションライフサイクルの上流側での助成処置であるのに対し、パテントボックス減税は、イノベーションの
      成果物として生まれた特許などの知的財産から生ずる利益に対する減税処置であり、イノベーションライフ
      サイクルの下流側での助成処置である。これらの減税処置は、重複して利用可能であり、企業にとって、
      より多くのメリットを享受できる。
         
       パテントボックス制度は、必ずしも目新しい制度ではなく、既に、オランダ、ルクセンブルグ、アイルランド、
      ベルギー、スペイン、フランス、スイス、中国といった国々で導入されている。
   
    (3) 我が国の状況
       昨年(2012年)10月、経団連は、来年度(2013年度)の税制改正として「パテントボックス」の創設を要望した。
      その概要は、次の通りである。
   
       「わが国の研究開発促進税制は、研究開発段階の投資活動に着目した制度となっているが、研究開発の
      成功後において、その成果物である知的財産権等の無形資産を国内に保有し、商業化するインセンティブは
      乏しい。一方、欧州諸国においては、近年、知的財産権に起因する所得について、低税率または所得控除を
      適用する、いわゆる、パテントボックス、あるいは、その概念を知的財産権以外にも拡大したイノベーション
      ボックスを相次いで導入している。
       わが国が現状を放置するならば、日本企業の研究開発拠点、あるいは、企業の超過収益力の源泉である
      無形資産が当該制度の導入国に移転しかねない。従って、わが国の研究開発拠点としての立地競争力を
      維持・強化するためにも、当該制度の創設を急ぐべきである。」
         
       また、2012年1月に、経済産業省、産業技術環境局から公表された、
         
      「『研究開発型ベンチャー』の創出・振興」
         
      と題する資料によれば、研究成果の事業化・実用化に向けた具体的施策例の1つとして、
      「イノベーションボックス税制」の検討を挙げている。
         
    (4) あとがき
       英国のパテントボックス制度は、適用範囲が広く、減税効果も大きいことから、利用価値は十分あると考える。
      適用を受ける場合には、適用要件をクリアしているかの検証が必要であり、その要件も開示されているが、
      「知的財産による所得」の範囲がどこまでかを把握するのは、容易ではない。本制度が実際に適用される
      事例が増えてくれば、その辺もハッキリしてくるであろう。
         
       また、適用する場合の計算例としては、税理士法人トーマツとDeloitte LLPのメンバーが執筆した中央経済社
      「旬刊 経理情報」2012年12月20日号の記事、「恩典を得るための条件は? 英国パテントボックス税制の
      利用上の留意点」に詳しい。
   
    (5) 参考文献
      *1.「「研究開発型ベンチャー」の創出・振興」:経済産業省 産業技術環境局
      *2.「欧州パテントボックス税制」:日本貿易振興機構デュッセルドルフ事務所・発行
      *3.「平成25年度税制改正に関する提言」:(社)日本経済団体連合会
      *4.「恩典を得るための条件は? 英国パテントボックス税制の利用上の留意点」:税理士法人トーマツ、
        Deloitte LLP
      *5.「パテントボックス制度の概要」:税理士法人プライスウォーターハウスクーパース
      *6.「Patent_Box」:ウイキペディア(英文)
                                                  2013年5月29日 弁理士 木下 實三
   
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